今回は、大分県北部の8市町村の地域連携DMOである「一般社団法人 豊の国千年ロマン観光圏」の堤事務局長と神元事務局次長にお話を伺いました。
豊の国千年ロマン観光圏とは?
豊の国千年ロマン観光圏は、大分県8市町村(別府市、中津市、宇佐市、豊後高田市、国東市、杵築市、日出町、姫島村)で構成されています。
「千年の記憶が紐解く知られざる日本 千年ロマン時空の旅」をブランドコンセプトに、宇佐神宮、国東(くにさき)半島の歴史・文化を中心とした、神代・古代・中世・近世・近代の、千年を超える時空の旅が楽しめるエリアです。
▼「豊の国千年ロマン観光圏」コンセプト
https://www.millennium-roman.jp/concept/
「神仏習合」発祥の地
このエリア最大の特徴は、1300年前に宇佐神宮で生まれた「神仏習合文化」が今もなお息づいていること。神と仏が融合した世界に類を見ない信仰文化、これこそが日本人の「和の心」の礎とも言われています。
明治の神仏分離令による廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)によって、全国各地で見られた神仏習合文化の多くは失われましたが、国東半島では「六郷満山(ろくごうまんざん)文化」として、お寺を中心に地域の人々の生活に受け継がれています。
六郷満山の修行の道をベースに地元ガイドと歩く「国東半島峯道(みねみち)ロングトレイル」は、日本独自の神仏習合文化や原風景を味わえると、外国人観光客からも人気の体験となっています。
▼国東半島峯道ロングトレイル
https://www.millennium-roman.jp/jikuhaku/plans/detail/70401e1f-4b85-4a6c-b7ec-773b9d8ffb8a
「世界農業遺産」への認定
また、先人たちが築いてきたクヌギ林とため池がつなぐ農林水産循環が評価され、国東半島宇佐地域は2013年に「世界農業遺産」に認定されました。
「世界農業遺産」を体感できるプログラムとして、地元の農家さんを案内人とした農業体験や工芸体験など、様々な体験プログラムを準備しています。
山の中のクヌギ畑で栽培する原木しいたけの生産体験や、この地方だけで生産され、畳の材料となる「七島藺(しちとうい)」の植え付け体験や工芸体験などを通して、サステイナブルな考え方を学ぶことができると注目されています。
▼国東半島宇佐地域世界農業遺産「体験」
https://www.kunisaki-usa-giahs.com/experience/
DMOの成り立ち
以前から、別府は温泉街として知名度の高い観光地でしたが、宇佐神宮などの周辺地域の歴史遺産が十分に活かしきれていないという課題がありました。
そこで、地域が連携して観光に取り組んでいくために、2010年に「豊の国千年ロマン観光圏協議会」が設立されたのが始まりです。
同年に観光圏として認定されましたが、ただ広域連携をするだけではなく、持続的な観光地域づくりに取り組むために、2017年4月には一般社団法人化をし、同年11月に「地域連携DMO」として登録を受けました。
体制について
現在、事務局の職員は堤事務局長と神元事務局次長、臨時職員1名の合計3名体制。実は3人とも福岡県出身でこのエリアの出身ではありません。
“よそ者”であることのメリットは、地元の方にとっては当たり前のことでも、魅力的なコンテンツになりうると気付ける点です。
ただ、“よそ者”がいくら魅力を語っても想いは足りません。あくまでも主役は地元の方々であり、その想いを引き出すのが私たちの役割だと思っています。
また、3名体制でもうまく回せている理由は「観光地域づくりマネージャー」の存在です。現在は、エリア内の各市町村の観光協会職員を中心とした12名の地域づくりマネージャーが活躍しています。
地元のネットワークを活かして、農家さんや漁師さん、ガイドさんなどと一緒に、地域ならではのコンテンツづくりのほか、企画会議への参加、ワークショップの運営など、地域のコーディネーターの役割を担っていただいています。
「継続」の重要性
地域連携を進める上で一番大切なことは、「継続して取り組む」ということだと考えています。
一般的なDMOは、自治体からの出向者で構成されていることが多いのですが、制度上2~3年で担当者が異動してしまうという課題があります。
地元の人たちは継続して地域づくりに関わっているため、DMO側の担当者が変わる度に、リセットされたような感覚を受けてしまいます。
豊の国千年ロマン観光圏では、堤事務局長も神元事務局次長も、協議会の立ち上げ当時から関わってきました。
そのため、何かあった時には担当者や窓口の人の顔が浮かぶような関係性を、地元の方々との間で築けています。
日々そうした相談を受けている中で、新しい企画やコンテンツが生まれるという好循環に繋がっています。
DMOとしての取り組み
メインの事業は、地域のプラットフォームとして、地元の方々が作ったプランや体験プログラムを販売することです。そのために第2種旅行業者の登録をしております。
最近は各自治体のプランを売るDMOは増えてきていますが、広域の旅行商品を販売しているDMOはまだ少ないと思います。
プランづくりの中心となっているのが「千年ロマン夜学」というワークショップです。
観光地域づくりマネージャーを中心に、地元の方々がそれぞれのアイデアを持ち寄ってプランづくりを進めます。
例えば、地元のお寺さんがこんなプランを作りたい、漁師さんが漁船クルーズをしたい、染物職人さんがこういうオリジナルの体験ができるよ、というようなアイデアです。
最終的に企画を形にして販売するのは事務局側ですが、地元の人たちには必ずプログラムの案内人として携わっていただくようにしています。
また、前述の「世界農業遺産」の体験プログラムづくりや販売窓口を担っていたり、農林水産省の「SAVOR JAPAN(農泊 食文化海外発信地域)」事業に取り組んだり、JNTO(日本政府観光局)や広域DMO、全国13の観光圏と連携したプロモーション活動を行うなど、様々な取り組みを行っています。
インバウンドの取り組み
九州全体では、外国人観光客のうち、東アジア圏からの訪問が9割を占めています。
そのため、東アジア圏へのプロモーションは各自治体が行っており、逆に欧米圏のアプローチが比較的少なくなっています。
豊の国千年ロマン観光圏では、まだまだ伸びしろのある、ヨーロッパとオーストラリアをメインターゲットとして設定して取り組んできました。
コロナの影響の長期化により、欧米圏からの旅行客が戻るまでにまだ時間を要することが想定されるため、昨年からは台湾を第2ターゲットに設定し、リピーター客を国東半島に呼び込もうと取り組んでいます。
この地域の大きな特徴の一つでもあるのが、別府市に立命館アジア太平洋大学(APU)があることです。
APUは学生の半数近くを留学生が占める、全国屈指の国際的な大学です。
豊の国千年ロマン観光圏の事務所もAPUの施設内に設置しており、インバウンド向けのモニターツアーには留学生にも参加してもらっています。
留学生と関わっていて気付くことは、日本人とは違う目線を持っているということです。
例えば、ツアー中に道端にある何の変哲もないお地蔵さんを写真に収めるなど、日本人にとっては当たり前のことに興味を持っていることが分かりました。こういった視点は、インバウンド客向けのコンテンツ作りにおいて非常に参考になります。
また、彼らは自国のコミュニティでのネットワークが広く、別府愛も強いため、一人ひとりがまるで観光大使のように情報発信をしてくれるのも大きいですね。
APUの設立から20年が経ち、大分県全体として留学生を受け入れる体制が整っています。
地元の人たちにとって、外国人の受け入れに不安がないことも、このエリアの強みの一つです。
担当者からのメッセージ
日本人が大切にしてきた暮らしや心などを学べるプログラムばかりですので、ぜひ一度ご体験いただきたいです。
DATA
一般社団法人 豊の国千年ロマン観光圏(とよのくにせんねんロマンかんこうけん)
大分県別府市京町11-8
▼公式WEBサイト
https://www.millennium-roman.jp/
https://www.facebook.com/millenniumroman
https://www.instagram.com/m_toyonokuni/
https://twitter.com/millenniumroman
▼Undiscovered Japan
http://www.undiscovered-japan.com/
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